いきなり怒鳴りつけた

「暇ば見て、小作人みんな出て直すより仕方が無えべど。――村に金無えんだから。」「犬だなア、兄ちゃ……。」「うるさいッ!」いきなり怒鳴りつけた。――「又小作いじめだ! 弱味につけ込んでやがるんだ。放ってけば、どうしたって困るのア小作だ。んだら、キット自分の費用でやり出すだろうッて、待ってやがったんだ。――村会議員なんて、皆地主ばかりだ。勝手なことばかりするんだ。」 S村で、以前、村役場に対して小作争議を起したことがあった。北海道は町村が沢山の田畑を所有していて、それに小作を入地させていた。それで、よく村相手の争議[#「村相手の争議」に傍点]が起った。――然しS村の村会議員が全部地主であったために、後のこともあり、又やがては自分達の方への飛火をも恐れて、頑強に対峙してきたために、惨めに破れたことがあった。「明日吉本さんの処さでも集って、相談すべアって。」 おはぐろ[#「おはぐろ」に傍点]の塗りのはげた母親の、並びの悪い歯の間に、飯が白く残っていた。「………………。」 健は塩鱒の切はしを、せッかちにジュウ、ジュウ焼いて、真黒い麦飯にお湯をかけて、ザブザブかッこんだ。 風が出てきたらしく、ランプが軽く揺れた。後の泥壁に大きくうつッている皆の影が、その度に、あやつられるように延びたり、ちぢんだりした。 由三は焚火に両足をたてて、うつらうつらしていた。「母《はば》、いたこ[#「いたこ」に傍点]ッて何んだ?――山利《やまり》さいたこ来てな、今日お父《ど》ばおろし[#「おろし」に傍点]て貰ったけな、お父|今《えま》死んで、火の苦しみば苦しんでるんだとよ。」「本当か?」

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